クライアント仮想化の方式の1つであるVDI(Virtual Desktop Infrastructure)は、情報セキュリティの強化や働き方改革などのニーズにより普及してきた技術です。これはユーザーのデスクトップ環境をサーバーに集約して稼働させ、ユーザーからはネットワーク経由で遠隔操作することで、エンドポイントのセキュリティを高めたり、IT管理負担を軽減したり、場合によってはローカル環境よりも高いパフォーマンスを提供する場合もあります。

最近ではこのVDIをクラウドサービスとして提供するDaaS(Desktop as a Service)も登場し、VDIは益々注目を浴びています。VDIは中小企業においてもセキュリティ対策やテレワークなどの課題に対する解決策としても取り組まれているので、「VDIを取り入れたい」と考えている企業の裾野は広がっています。

VDIは多様な環境をサポートしますが、なかでも特に高い効果を発揮するのがマイクロソフトの最新OSであるWindows 10をVDI化する環境です。Windows 10自体がVDIを想定して設計されていることや、従来のOSにはない様々な機能によって日々の業務をサポートします。

たとえば、Windows 10にはContiniumという機能が備わっており、パソコンやタブレットなど使用するデバイスによってディスプレイを最適化してくれます。そのためWindows 10をVDI化した環境では、パソコンではパソコン専用の画面を、タブレットではタブレット専用の画面を同じデスクトップ環境で実現することができます。しかしながら、タブレットでは持ち歩きやすい反面、紛失や盗難などによる情報漏えいのリスクも同時にはらんでいるため、VDIと組み合わせることで利便性と安全性を両立できるのです。

このように大変利点の多いWindows 10のVDI化ですが、注意点もいくつかあるのでここで確認していきましょう。

注意点その1 アプリケーションの互換性は?

まず注意すべき点は「アプリケーションの互換性」です。これは、通常のデスクトップ環境とVDI環境では実行環境の違いから、従来使用していたアプリケーションがVDI環境で同じパフォーマンスで動作するとは限らないという問題です。

たとえばWindows 10をVDI化すると、デスクトップはサーバー上に移行します。さらにその環境でアプリケーションを利用すると、クライアントで実行するのとサーバーで実行するのではリソースの割り当てやネットワークの通信経路が変わります。そのため、特にパフォーマンスに変化が出ることがあります。

ユーザーは速くなることよりも、遅くなることに敏感です。「今まで使用していたアプリケーションの動作が遅くなった」、「アプリケーションの特定の機能が使えなくなった」といった問題が発生することもあるでしょう。

こうした問題を解消するためには、アプリケーションパフォーマンスを測定し、ユーザー体験(UX)を改善するための取り組みが大切です。

たとえばLakeside Softwareが提供する「SysTtrack」は、ワークスペースアナリティクスといったユーザーが使用しているアプリケーションを可視化し、パフォーマンスを分析および監視するためのソリューションです。

ユーザーがどんなアプリケーションを利用しているのか?パフォーマンスの低下は起きていないか?を常に監視して、問題が発生した際はその原因を瞬時に特定します。Windows 10をVDI化した仮想環境においてもSysTrackはリアルタイムな分析および監視を提供するため、デスクトップ環境をサーバー上に移行した状況でのパフォーマンスを監視し、トラブルを未然に防ぐことができます。

注意点その2 グラフィックリソースの消費

Windows 10は、Windows 7に比べてグラフィックリソースを大量に消費する仕様になっています。両OSのフレームバッファを比較すると、Windows 10ではアイドル時でも最低256MBのフレームバッファが必要です。フレームバッファ※1とは、コンピュータのメモリ内で一画面分の表示状態を丸ごと保存しておく領域を指します。画面に何かを描画する際にはフレームバッファの内容を書き換えて、一定のタイミングでフレームバッファの内容がディスプレイ等の表示装置に送信されて表示内容が更新されます。

従来のVDIの構成では、GPUは3D CADなどの特殊なアプリケーションが必要とするという認識が多かったのですが、Windows 10ではたとえば普通の動画再生を行うとCPUに高い負荷がかかります。動画を使って商品説明をする際などは、作業が円滑に進まないこともあるでしょう。こうしたグラフィックリソース消費への対策が無いまま従来の考え方でVDI化を進めてしまうと、グラフィックリソースを従来以上に消費してパフォーマンス低下を引き起こすのは必至です。

そこで、仮想環境で利用可能なGPUを搭載することをおすすめします。「GPU(Graphics Processing Unit:画像処理装置)」とは、二次元および三次元のコンピューターグラフィックの演算処理に必要なプロセッサの1つです。通常、グラフィックの処理はCPUが行いますがWindows 10のようにグラフィックリソースの消費が激しいOSでは、CPUだけでは処理に対応し切れない場合があります。

そこにGPUというグラフィックリソース処理専用のプロセッサがあると、処理を高速化して動画再生や3Dグラフィックを扱っている最中でも、他の作業をサクサク進めることが可能です。

従ってWindows 10のVDI化でGPUは欠かせない存在でしょう。

Windows 10のVDI、クラウド(Azure)展開が可能に

これからWindows 10への移行を開始したり、Windows 10をVDI化したいという企業にとって有効なのがクラウド基盤の活用です。シトリックスはマイクロソフトのパートナー企業であり、長きに渡って仮想化ソリューションを提供する大手ベンダーです。

シトリックスが新しく提供しているCitrix Cloudサービスでは、同社の仮想化ソリューションであるXenDesktopとクラウドプラットフォームのMicrosoft Azureの機能を利用して、VDIによるWindows 10 Enterpriseへの移行を支援しています。

マイクロソフトは、クラウドでのWindowsクライアントOSの利用をライセンス規約上禁止してきました。しかし、2017年よりAzure上に限ってWindows 10 Enterpriseの利用が認められるようになりました。なお、Windows 10を使用したVDIをAzure上に展開できるのは現在のところシトリックスに限られています。

Citrix Cloudサービスを利用することで迅速にWindows 10をクラウド上でVDI化でき、それによってユーザーは快適なVDI環境を手に入れることができます。そのために必要なシトリックスのライセンスコストは次の通りです。

  XenDesktop Essentials XenApp ServiceおよびXenDesktop Service
基本価格 1ユーザー/1ヵ月/12ドル 1ユーザー/1年/270ドル
最小ユーザー数 25ユーザー 25ユーザー
期間 毎月、月末に自動更新 年間
ディスカウント 利用できない 割引が適用される

このほかにも、Windows 10 Enterpriseなどのマイクロソフトのライセンスは、通常のVDIと同様に必要となります。

前述したワークスペースアナリティクスのSysTrackは、クラウド(Azure)上に存在するWindows 10のパフォーマンス分析および監視も可能です。デスクトップ環境がどこにあるかに関わらず、パフォーマンスを測定しボトルネックとなっている原因を瞬時に特定します。

Citrix CloudサービスによるWindows 10のVDI化でも、SysTrackによるパフォーマンス分析と管理をあわせてをご検討ください。

※1 フレームバッファとは - IT用語辞典

あわせて読みたい:
Windows 10とWindows 7の運用、WaaSで何が変わるのか?
WaaSって何?その概要から知っておきたいポイントまで
Windows 10移行で管理はどう変わる?WaaS時代のOS管理術
Windows 7 サポート終了の準備はできていますか?Windows 10への迅速な移行方法をご紹介
Windows 10へアップグレードする方法
Windows 7からWindows 10へ移行すべき10の理由
Windows 10 ProとWindows 10 Enterpriseの違いを解説
Windows 10への移行で注意するポイント

仮想デスクトップの導入から運用までトータルに支援「SysTrack」
デスクトップの仮想化計画