ユーザーエクスペリエンス(UX)は特にソフトウェア業界にて重視されている、プロダクトの評価指標です。端的に言うなれば、プロダクトを通じてユーザーが経験、体験する楽しさ・心地よさ・便利さなどの感情を、ユーザーに提供できる価値と考えます。具体的にはプロダクトのデザインだけでなく、使い勝手や信頼性を重視した設計を行うことで、ユーザーにとっての価値を測定し、有効的な改善サイクルを生み出すものです。

Microsoft、Google、そしてAppleの世界トップIT企業は、ユーザーエクスペリエンスに関するガイドラインを公表しています。いずれも参考になるものばかりなので、本記事でその内容を抜粋しながら、ユーザーエクスペリエンスとは何なのか?を紐解いていきます。

ユーザーエクスペリエンスの定義と、重要とされる理由

それでは、冒頭で述べてユーザーエクスペリエンスについてもう少し掘り下げていきたいと思います。まずは、ユーザーエクスペリエンス設計のコンサルティング事業を展開しているニールセンノーマン グループの定義を下記に引用します。

「ユーザーエクスペリエンス」は、エンドユーザーと、企業およびそのサービスや製品との相互作用について、あらゆる面を対象として含みます。典型的なユーザーエクスペリエンスの第一要件は、イライラや面倒なしに、顧客のニーズを正確に満たすことです。その次の要件として、製品に所有する喜びや使用する喜びをもたらす簡潔さと気品が求められます。真のユーザーエクスペリエンスは、単に顧客が欲しいと言ったものを提供したり、顧客が期待した機能を提供したりするだけには留まりません。

引用:The Definition of User Experience (UX)
和訳:ニールセン/ノーマンによるユーザーエクスペリエンスの定義

この定義から言えること、それは、ユーザーエクスペリエンスは単に使いやすさや洗練されたデザインといった要素だけで構成されているのではなく、プロダクトを認知するきっかけや利用するに至った経路などすべての要素を含み、エンドユーザーに楽しさ・心地よさ・便利さの面で総合的価値を感じてもらうことを目的としています。

ユーザーエクスペリエンスを意識したデザイン・機能・操作性などの設計を行うことは、売上向上とコスト削減の両側面において、ビジネスゴールを達成するのに強力に作用するのです。

Microsoftが検索エンジンをWindows Live SearchからBingに切り替えた際は、ユーザーが最も関心を持つ色を検証し、リンクテキストの色を特定のブルーカラーに統一したことでクリック数が増大し、年間売上高が8,000万ドル増加したという話があります。

Microsoft、Google、Appleのユーザーエクスペリエンスガイドライン

それでは、大手IT企業がそれぞれ公表しているユーザーエクスペリエンスガイドラインを参考にしながら、取り組みのポイントをまとめていきます。

Microsoft

Microsoftはユーザーエクスペリエンス ガイドラインを複数提供しています。その中から、Windows 7時代に発表されたガイドラインからWindowsユーザーエクスペリエンスのデザインの原則をご紹介します。

  1. コンセプトを減らして、信頼を高める
  2. どんなに小さいことも重要である
  3. 外観と内容を重視する
  4. 見やすく、かつ目障りでないようにする
  5. 質問量を少なくする
  6. カスタマイズではなく個人設定にする
  7. エクスペリエンスのライフサイクルを評価する
  8. 時間が貴重か、移動の多いユーザー向けに作成する
  9. 八方美人にならないようにする
  10. 特に特異な分野を持つ

Google

Googleからは、Google I/O 2014で紹介されたGoogle Material Designから、3つのデザイン原則をご紹介します。

  1. Material is the metaphor(マテリアルはメタファである)
    Google Material Designではデザインのメタファ(比喩)にマテリアル(素材)を採り入れていきます。ユーザーエクスペリエンスやユーザーインターフェースを紙やインクといった素材との関係性で考え、ユーザーにとってわかりやすいデザインを狙います。
  2. Bold、graphic、 intentional(大胆、生き生き、意図的に)
    ユーザーエクスペリエンスの要素を印刷ベース(タイポグラフィ、色、画像の使い方など)のデザインと同様に考えることで、エンドユーザーを視覚的にガイドします。意図の選択やエッジまでの画像、大きなタイポグラフィ、意図的な余白などといった要素は、ユーザーを没頭させるような大胆で生き生きとしたインターフェイスを生み出します。
  3. Motion provides meaning(モーションは意味を提供する)
    Google Material Designではデザインのモーション(動き)を重視します。モーションはエンドユーザーの注意を惹き、ユーザーエクスペリエンスの継続を維持するのに役立つ有意義なアプローチなのです。モーションはユーザーの原動力に火をつけ、高める効果もあります。

Apple

それでは最後に、AppleのHuman Interface Guidelinesより、iOSでのプロダクト開発で意識すべきガイドラインをご紹介します。

  1. タッチジェスチャに対応したユーザーインターフェイス要素をデザインし、Appを簡単かつ自然に操作できるようにする
  2. タップターゲットは44×44ポイント以上の大きさで作成し、指でも正確にタップできるようにする
  3. 11ポイント以上の大きさの文字を使用し、通常の閲覧距離でもズームすることなく快適に読めるようにする
  4. フォント色と背景色のコントラストを適切に設定し、文字が読みやすくなるようにする
  5. 文字が重ならないように行や文字の間隔を十分に取り、読みやすさを向上させる
  6. すべての画像アセットに高解像度(2倍)バージョンを用意する(2倍の解像度のバージョンがない画像はRetinaディスプレイでぼやけて表示される)
  7. ゆがみが発生しないように、画像は必ず本来のアスペクト日で表示させる
  8. コントロール部品は操作するコンテンツの近くに配置し、認識しやすいレイアウトを心がける
  9. テキスト、画像、ボタンを適切に設置して、それぞれの情報の関連性を認識しやすくする

プロダクトのユーザーエクスペリエンスを見つめ直そう!

いかがでしょうか?日々、意識することなく利用しているこれらの製品やサービスは、しっかりとしたガイドラインに則って利用されていることに気づいたのではないでしょうか?もし、私たちが利用するソフトウェアでストレスやイライラがたまるような動作になったときにはユーザーエクスペリエンスは低下し、それらは会社への不満などに行き着くことは容易に想像できます。そのためにも多数のガイドラインを参考にしながら、自社環境のユーザーエクスペリエンスについて見つめなおしてみてはいかがでしょうか?