「CAD on VDI」とは、仮想デスクトップ技術を利用してCADソフトウェアを活用することです。ただし、CADなどのグラフィック性能が要求されるソフトウェアでは、CPUに加えてGPUを活用することが必要不可欠です。しかし、仮想デスクトップ環境でGPUを共有してCADを利用において、パフォーマンス問題などの課題に直面する企業が多いという実情があります。
本稿ではCAD on VDIを安定稼働させて最大限活用するための手法を基本的な内容とともにご紹介します。

VDI?GPU?仮想化の基本をおさらい

本題に入る前に、「VDIってなに?」「GPUってなんだ?」といった読者のために、仮想化の基本をおさらいしていきます。

まず、「VDI(Virtual Desktop Infrastructure)」は「仮想デスクトップ」と訳され、クライアントパソコンを仮想化し、サーバー側でデスクトップを集約管理するための方式の1つです。1つのサーバー上に複数の仮想マシンを構築して、さらに各仮想マシンにOS、ミドルウェア、ソフトウェアをインストールします。つまり、クライアントパソコン内部にデスクトップOS環境はないものの、ほとんど同じデスクトップ環境をサーバーから提供できるようになる、ということです。

一方「GPU(Graphics Processing Unit)」は、3Dグラフィックなどの画像描写を行う際に必要となる計算処理を行うための半導体チップ(プロセッサ)のことです。クライアントパソコンやサーバーに搭載されている半導体チップとしては、コンピューターで頭脳としての役割を持っている「CPU(Central Processing Unit)」は一般的に認知されています。これに対してGPUは、3Dグラフィックなどの画像描写のために使われる「コンピューターに搭載されたもう1つの頭脳」のようなものです。CPUはさまざまな計算処理を行いますが、3Dグラフィックなどの画像描写のための計算処理はGPUの方が圧倒的に得意なため、それに関する処理はGPUに一任している、と考えると分かりやすいでしょう。

ただし、近年ではGPUの高い計算処理能力を活用した、GPUをCPUの代替として非常に計算能力の高いコンピューターが開発されています。単純な計算速度で比較すれば、GPUはCPUの数倍~100倍以上の計算速度を持つ、超優秀な頭脳なのです。

ここで、冒頭で登場した「vGPU(vitual- Graphics Processing Unit:仮想GPU)」ってなに?GPUを仮想化するってどういうこと?と、新しい疑問が生まれた方も多いかと思います。

vGPUとは何か?

ここからが本題です。3Dグラフィックを用いてコンピューター上で製品設計や住宅設計、部品設計、アッセンブリ等が行えるソフトウェア「CAD(Computer Aided Design)」を使用するためには、非常に高い計算処理能力が求められます。GPUは、CADをサクサク動かすためにも最適な半導体チップであり、CADを動かしているコンピューターには100%と言ってよいくらいGPUが搭載されています。

CADは製造業や建設業等における設計業務で欠かせない存在ですので、当然ながら「仮想マシン上でCADが動かせたら、リソース管理はもっと楽になるし、業務全体の効率性が向上するのではないか?」というニーズが生まれました。そしてCADを仮想マシン上で動かすために考案されたのが「GPUパススルー」という方式です。

GPUパススルーでは、各仮想マシンに直接GPUを紐づけることによって、ユーザーは1つのGPUを占有することができ、高い性能を受けられるため仮想マシン上でもCADを動かすことが可能になります。仮想マシンとGPUを「1対1」の形式で接続するため、非常に高い計算処理能力を発揮します。

しかし、そこには効率化という観点で問題もありました。「利用されていないGPUがあっても、それを他のユーザーと共有・分割して使用できない」という問題です。そもそも仮想化という技術は、1つのリソースを論理的に分割して、リソースに余りをもたせずフルに活用するための技術です。従って、仮想マシンとGPUを1対1で接続するGPUパススルーは、仮想化のコンセプトとは相反していたため、結果的にGPUリソースの余剰を作ってしまい、ROI(投資対効果)の面で高いメリットを発揮していなかったのです。

そこで登場したのが、GPUを完全に仮想化した「vGPU」という仮想化方式です。2013年に登場したこの方式は、複数の仮想マシンでGPUを論理分割して活用することができるため、性能こそGPUパススルーに劣るものの、リソースの余剰を作らずフル活用して、コスト効率を大幅に向上させ、ROIを高めることができるというメリットを生み出しました。

例えばGPUベンダーであるNVIDIA社のNVIDIA GRID K2には複数のGPUを搭載したボードを提供しています。それぞれのGPUで複数ユーザーの利用が可能であるため、GPUを効率的に利用できるということで、仮想マシン上でCADを動かすための主流な技術になっています。

CAD on VDI環境で注意すべきポイントとは?

vGPUによって、仮想マシン上でCADを動かす「CAD on VDI」を実現すれば、多大なメリットを享受できることは確かです。しかし、「CAD on VDI」でも注意すべきポイントがあります。

まず、VDIという環境の特性上、デスクトップがCPU・GPUやメインメモリなどの占有リソースを持たず、複数のユーザーでリソースを共有しているために、たった1台の仮想デスクトップ上で極度に重い処理を走らせた場合に全体のパフォーマンスに影響をおよぼします。さらに、「誰が?」「どのアプリケーションで?」「どれくらいのリソースを使っているか?」を把握することが困難なため、原因の切り分けが難しい仕組みになっています。

上記のようなCAD on VDIによるパフォーマンス問題の事象が多くの企業で頻発しています。

これらの問題をクリアするには、サーバーの監視、仮想化環境の監視、そして、特にvGPUの監視を行う必要があります。理由は「CAD on VDI」ではGPUパフォーマンスが作業の快適さに直結し、GPUのメインメモリを仮想マシンごとに割り当てている場合は、各仮想マシンに割り当てたGPUのメインメモリ使用状況を常に把握して、適切なサイズに調整していくことが大切だからです。もちろん、リソースの利用状況を鑑みながら余剰リソースを解約したり、リソース不足の場合には追加したりするという判断も必要になります。

また、通常のVDI環境を同じようにネットワークの監視も注意すべきポイントになるでしょう。リアルタイム性の高い画像描写を転送するためのネットワーク帯域と、CADユーザーの体感品質の低下に繋がるようなネットワーク遅延やパケットロスも今まで以上に重要な監視項目になるでしょう。

このように「CAD on VDI」はメリットばかりではなく、快適なCAD環境を維持するためには注意すべきポイントがたくさんあります。「CAD on VDI」構築にはパートナー企業と協業しながら、既存環境を考慮しつつ、最適かつ快適なCAD環境を構築・維持できるよう慎重にプロジェクトを進めていっていただきたいと思います。

Lakeside は、NVIDIAとの提携において、NVIDIA GRIDおよびNVIDIA仮想化プラットフォームに向けてSysTrack Desktop Assessmentを無償で提供しています。このクラウドベースのアセスメントを利用することで、自社IT環境に関する情報を集めて、利用量やニーズなどを的確に把握してGPUハードウェアとソフトウェアの推奨を行います。ぜひこの無償アセスメントをお試しください。
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