日本政府が推進する働き方改革は、皆が自分に合った働き方を選択できる労働環境を整えることで、老若男女誰もが活躍できる社会、「一億総活躍社会」の実現に向けた取り組みの1つです。また、労働における格差を無くすことにより、雇用形態にかかわらず労働者1人1人を尊重することで、社会全体の活性化を図ります。

このガイドラインとして発表されているのが、厚生労働省の『働き方改革~ 一億総活躍社会の実現に向けて ~』です。その中では2019年4月より施行が始まった働き方改革の具体的な法律となる「働き方改革関連法案」の内容を踏まえつつ、その実現に向けたガイドを紹介しています。

本稿では、ガイドラインを参照にしながら、みなさんが働き方改革を実現していくための方法と、働き方改革関連法案の内容をより分かりやすく解説していきます。

働き方改革関連法案とは?

2016年8月、一億総活躍社会の働き方改革大臣として初代大臣に加藤勝信氏が任命され、同年9月に内閣総理大臣決済にて「働き方改革実現会議」が設置されています。この組織は、首相と担当大臣を含む関係官僚8人と、有識者15人から構成されています。
そして2017年3月までにわたり10回の実現会議が開催され、「働き方改革実行計画」が決定されます。そして2018年6月に働き方改革関連法案が成立し、2019年4月より順次施行されていく運びとなりました。
ちなみに、働き方改革関連法案の正式名称は「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」です。

この働き方改革関連法案の大きな柱になっているのが「労働時間法制の見直し」と「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」です。

日本ではよく「働きすぎ」や「ブラック企業」などの話題がニュースで取り上げられ、ワークライフバランスを保てない従業員が多いことが問題視されています。実際に、過労によって精神病を患い、最悪の場合は死に至るケースもニュースなどで取り上げられています。まずは「不条理な長時間労働を無くすこと」を使命として「残業時間の上限規制」と中心に7つの法案が施行さています。

雇用形態による格差も大きな問題の1つです。同じ質と量の仕事をしているにもかかわらず、正規雇用社員と非正規雇用社員の間に給与や福利厚生など待遇格差が大きいことから、多くの労働者のモチベーションと社会に対する期待が低くなり、市場成長に影響を与えていると考えられています。

これらの問題を解消すべき施行されたのが働き方改革関連法案であり、業界業種や事業規模を問わず、すべての企業が同法案への対応が義務付けられています。

労働時間法制を見直すための7つの法案

日本企業の労働時間法制、つまりは労働環境を改善するための法案は7つ施行されています。①残業時間の上限規制、②勤務間インターバル制度の導入、③1年あたり5日間の年次有給休暇取得の義務化、④1ヵ月あたり60時間を超える残業での割増賃金率引き上げ、⑤労働時間状況の客観的把握の義務化、⑥フレックスタイム制の拡充、⑦高度プロフェッショナル制度の新設、となります。

1. 残業時間の上限規制

1947年に制定された労働基準法では、法律上の残業時間上限が無く、残業時間がひどい場合でも行政指導が入るのみでした。改正後は、残業時間の明確な上限を定め、これを超える残業はできなくなっています。

2. 勤務間インターバル制度の導入

1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に一定時間以上(11時間以上)のインターバルを確保する制度です。たとえば21時に終業した社員の場合、翌日の出社時間は8時以降、23時に終業した場合は翌日の出社時間が10時以降と変化します。

3. 1年あたり5日間の年次有給休暇取得の義務化

これまでの年次有給休暇は社員が自ら申し出なければ取得できず、職場の雰囲気などを感じ取って申請しづらいなどの問題がありました。改正後は、企業が労働者の希望を聴き、その希望を踏まえて時季を指定し、最低でも年5日は取得するよう促します

4. 1ヵ月あたり60時間を超える残業での割増賃金引上げ

1ヵ月に60時間を超える残業の割増賃金について、大企業ではすでに50%への引き上げが施行されていますが、中小企業では25%のままになっています。改正後は、中小企業でも割増賃金が50%へ引き上げられます。

5. 労働時間状況の客観的把握の義務化

健康管理の観点から、裁量労働制が適用される人や管理監督者を含め、すべての人の労働時間状況が客観的方法あるいはその他の適切な方法で把握されるよう義務付けられます。

6. フレックスタイム制の拡充

労働時間の清算期間が1ヵ月間だったフレックスタイム制にて、清算期間を3ヵ月にすることで子育て世代にて、子供と過ごす時間をより確保しやすいなどのメリットが生じます。

7. 高度プロフェッショナル制度の新設

自律的かつ創造的な働き方を希望する人が、高い収入を確保しながらメリハリのある働き方ができるよう、本人の希望に応じた自由な働き方の選択肢を用意する制度です。

雇用形態に関わらない公正な待遇を確保するには?

この法改正の目的は、「同一企業内における正規・非正規との間の不合理な待遇差を無くし、どのような雇用形態を選択しても待遇に納得して働き続けられるようにすることで、多様かつ柔軟な働き方を選択できるようにする」ことです。

具体的にはパートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者など雇用形態に応じた法改正が施行されます。さらに、労働者に対数する待遇の説明を、以下のように義務化します。

  • 有期雇用労働者に対し、本人の待遇内容及び待遇決定に際しての考慮事項に関する説明義務を創設
  • パートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者について、事業主に正規雇用労働者との待遇差の内容・理由等の説明義務(求めた場合)を創設
  • 説明を求めた場合の不利益取扱い禁止を創設

働き方改革を実現するには?

残業時間の上限規制に関しては、2019年4月より大企業で、2020年4月より中小企業で施行されます。中小企業にとって、当面の課題は「如何に残業時間を削減するか?」ではないでしょうか。

人材資源が限られ、かつかんたんには新しい人材を雇用できない場合、残業時間を削減するための方法としてICT(情報通信技術)の利活用が挙げられます。ICTを導入することで、人材雇用コストよりも低い投資で企業全体の労働生産性を高め、残業時間短縮を目指す方法です。

このほかの法案に関しても、ICTを必要とするケースが多くなるでしょう。「働き方改革関連法案への対応で余計な投資が必要だ…」と悲観的に考えるのではなく、ICTの利活用によって生じた労働生産性は、新しい事業のスタートや顧客満足度強化への取り組みに有効に働くなどメリットになる点を見据えつつ、ICTに対して積極的な姿勢を持つことが大切です。

この機会に、皆さんの会社における働き方改革についてぜひ熟考してみましょう。