VDI(仮想デスクトップ基盤)は、エンドユーザーが利用するデスクトップ環境をサーバー側に集約して実行し、ユーザーはクライアント端末からネットワーク経由で画面を転送して利用するしくみです。これにより、運用効率化や端末からの情報漏洩対策、テレワークなどの利便性向上を目指すものです。その導入効果が高く、かつては金融機関や官公庁、自治体などを中心に利用されていましたが、現在では業種や規模を問わず導入が進んできています。しかしながら、VDIは導入して終わりではありません。ユーザーが利用する仕事の環境そのものになるため、導入後の運用が非常に重要になります。単にデスクトップの実行場所が変わるだけではなく、それに伴って運用方法も従来のデスクトップ環境とは異なるポイントや注意点があります。

今回は、VDI運用のポイントおよび注意点についてご紹介します。

VDI運用時のトラブルの原因とは

まずVDIの運用時に発生するトラブルの原因からご紹介しましょう。実際にトラブルの現象は、デスクトップにつなげなかったり、パフォーマンスが出なくて利用に耐えないなど多岐にわたりますが、そうした状況を生み出す原因をいくつかに整理してみましょう。それを踏まえて運用のポイントや注意点をご紹介します。

原因1. 不適切なサイジング

VDIを導入する際の最初のハードルは設計時のサイジングです。VDIの設計を難しくする要素は大きく2つあります。1つは設計要素がサーバー、ストレージ、ネットワークなど多岐にわたるため複雑であること、もう1つはユーザーの利用状況を把握しきれないことです。

まず、設計要素の複雑さですが、デスクトップを実行するサーバー側だけをとっても、サーバーのCPUやメモリなどのスペック、仮想化ソフトウェア、仮想マシンのリソース割り当て、ストレージ、ネットワークなど多岐にわたり、それぞれを熟知していなければ適切な設計はできません。昨今はHDI(Hosted Desktop Infrastructure)やHCI(ハイパー コンバージド インフラストラクチャ)などがハードウェアベンダーから提供され、設計をシンプルにすることができるようになってきました。

しかし、技術の進歩によって設計の複雑さを緩和できても、次の課題はユーザーのワークロードの把握です。普段ユーザーが利用しているデスクトップ環境をサーバー側で実行するのですから、当然いまユーザーがどのような使い方をしているか把握しなければサイジングはできません。しかしながら、すべてのユーザーの利用状況を把握するのは容易なことではないことも事実です。それぞれのPCのスペックはもちろん、OSやインストールされているアプリケーションとそのバージョン、利用頻度やCPUやメモリなどのリソースの負荷状況、さらに業務で使用している周辺機器の把握など、VDIを導入しつつ現行の業務環境を担保するには、その把握が非常に重要です。

たとえば代表的なユーザーだけの利用状況だけを元にして設計やサイジングをすると、導入後のトラブルにつながりやすくなってしまうのです。

原因2. 不十分な事前検証

適切なユーザーの利用環境の把握と設計やサイジングを行ったからといって、そのまますぐにユーザーが一気に利用するのはリスクがあります。たとえば、朝のログインストームは当然ですが、それ以外のピークタイムの存在や、週次や月次でのピーク、使用頻度の少ないアプリケーションの利用など、実際に使ってみないとわからないポイントは多く存在します。

導入計画は、必ず小規模なパイロット運用から始め、少しずつ増やしてゆくような計画を立てましょう。その期間はトラブルが発生しても業務が継続できるようなバックアップの手段も用意し、また同時にトラブルの原因の切り分けや対応ができる体制も整えておきます。

実際の業務はVDIのデスクトップだけで完結しない場合もあるため、このような懸賞のフェーズを経たうえで本格的な展開と運用を計画しないと、大きなトラブルを起こし、業務への大きな影響を発生させることにもなりかねません。

原因3.柔軟性の欠如

ユーザーの業務は絶えず変化しています。しかしながら、VDIのしくみはサーバー側の投資が大きいため、一度導入するとハードウェアの保守期限である5年間はそのまま使いたいというケースもあるでしょう。しかしながら、ユーザーの利用形態だけでなく、VDIを構成する仮想化ソフトウェアや仮想マシンのOS、アプリケーションなどはそれよりも速いサイクルで更新されてゆきます。

ユーザーの利用環境の変化に備えて常に利用状況を把握し続ける必要があります。ユーザーごとの利用状況の変化や、ユーザー数が増えることもあるので、必要に応じてリソースを増強するとともに、構成するソフトウェアなどの更新にも対応できるような柔軟性がある運用が求められます。
VDIの環境はユーザーが日々使用する仕事の環境そのものなので、ビジネス環境の変化を想定していないと、あとから大きなトラブルを生むことにもなりかねません。

原因4. 障害時の問題切り分けが困難

VDIのメリットの1つは、デスクトップ環境全体でリソースを共有することによる運用管理の効率化と、リソース利用の効率化です。しかし、障害発生時には、リソースを共有しているからこその難しさが出る場合があります。

一般的には1台の物理的なサーバーに複数の仮想マシンがあり、それに対応したユーザーが割り当てられています。またそのサーバーも複数台で運用されます。そのため、1人のユーザーに発生した障害が、システム全体なのか、特定のサーバー内なのか、一人のユーザーの環境のみなのかなどをいち早く把握して、複数の階層で構成されているシステムの原因を特定しておかないといけません。

そのためには、サーバー単位のパフォーマンス監視だけでなく、ユーザーのセッションごとのパフォーマンスを把握できる仕組みを合わせて持っていないと、トラブルを長引かせてしまう原因になってしまいます。

VDI運用のポイントと注意点

VDI導入や運用時に大きな問題が発生してしまうケースの原因は上記のようなポイントに整理できるでしょう。では次に、このようなトラブルが発生しないようにするための運用ポイントと注意点についてご紹介します。

ポイント1. 徹底したユーザー環境の把握に基づくVDI環境の設計とサイジング

最初のポイントは、運用に入る前の導入時のポイントです。VDIはもともと設計要素が多く複雑なシステムですが、新たな技術によりその難易度は下がってきています。その代わりにより重要になってくるのがユーザーの利用状況の把握です。
サイジングに先立って多くの場合にはユーザー環境のアセスメントを行うと思いますが、サンプル調査的なものでは正しく全体の状況を反映しない場合もありますし、利用頻度が少ないものなどを把握できない可能性もあります。
そのため、サイジングを始める前に、ユーザー環境の全体を把握できるような仕組みを導入しておくことは非常に重要です。またこれは導入時だけでなく、運用の際にも活用できるかどうかという視点で検討しましょう。

ポイント2. VDIパフォーマンスの可視化

運用時の重要なポイントは、ユーザーの利用状況を常に把握できることです。これは障害等を未然に防ぐとともに、障害が発生したとしてもすぐに問題の切り分けを行い、迅速な対応を行うためには重要なポイントです。

たとえば、システム管理ツールを導入していても、それがサーバーやOSのレベルでしかパフォーマンスやリソースの状況を把握できないと、ユーザーレベルでのパフォーマンスの低下や接続障害などの際に十分な状況の把握ができない可能性があります。
そのため、ユーザーのセッションレベルでのパフォーマンスや状況を把握できる仕組みが有効になってきます。

また、VDIの仕組みはサーバー側だけで完結せず、そこに接続する経路で障害が発生する場合もあります。そのため、ユーザー環境全体の視点で状況把握が可能なツールが望まれるのです。

ポイント3. 変更に対応できる柔軟性

VDI環境は一度入れたらしばらく固定的に利用するという性質のものではなく、ユーザーの業務やビジネス環境に応じて柔軟に対応していかなければ、業務自体に影響を与えてしまいかねません。
そのためには、トラブル対応だけでなく、構成するOSやアプリケーションなどのソフトウェア、ユーザー数や利用状況の変化に応じたリソースの増強などを継続的に行ってゆく必要があります。
また、一般的にはVDI環境は段階的に導入されたり、一部の部門や職種を対象に導入されたりするため、組織内にはVDI環境とPC環境が混在していることも珍しくありません。
それぞれの環境ごとに異なる管理ツールを導入したのでは、せっかくのVDIによる運用管理効率の向上という効果も逆効果になってしまいます。
そのため、あくまでユーザーの視点でVDIとPCを両方管理できるツールを検討しましょう。

導入から運用まで活用できる管理ツールが不可欠

非常に多くのメリットをもたらすVDIですが、適切な設計による導入と運用がなければその価値を享受することはできません。そのためには、適切な運用管理ツールが不可欠です。
それはサイジングのためのユーザー環境の把握からすでに始まっていて、それをもとに継続的な運用も可能にするという視点が重要です。またサーバー側でリソースが共有されていたり、PC環境も混在していたりする環境では、「ユーザー」の観点でパフォーマンスやリソースの管理ができることが非常に大きな意味を持ちます。

システム運用管理ツールであるSysTrackは、ハードウェアやソフトウェアのインベントリだけでなく、各ユーザーの環境のパフォーマンスやリソースの負荷状況、ネットワークの状況などの把握を可能にします。
VDIのフル活用のために必要な設計段階から、よりユーザーにとって重要な運用段階においてもSysTrackは大きな役割を果たします。ぜひご検討ください。

VDI導入まえの包括的な評価、モデリング、移行プランニングはSysTrack Virtual Machine Planner (VMP)が、サポートします。

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