VDI(Virtual Desktop Infrastructure:仮想デスクトップ基盤)の導入によるビジネスパフォーマンスが向上、テレワーク導入と働き方改革、端末管理の一元化などいろいろな効果を期待されることでしょう。しかし、VDIを導入したからといってその効果が確実に得られるわけではなく、「こんなはずではなかった…」と思いもよらぬトラブルが発生する可能性もあります。本記事では、VDI導入における具体的な失敗例を紹介しつつ、VDI導入時の対応策を解説します。

VDI導入「こんなはずではなかった…」となった失敗事例

VDI導入ではさまざまなトラブルが発生します。まず大切なのは、どのようなトラブルが発生しがちなのか?を知ることにあります。そこで、VDI運用における代表的なトラブル事例を5つご紹介します。

事例 1. 最新のVDI機能が実際はほとんど必要なかった…

働き方改革やリモートワークの必要性からVDI市場は堅調に成長しています。シェア争いは熾烈を極め、VDIソフトウェアベンダー各社はこぞって新しいバージョンや機能を市場へと投入しており、中には革新的な機能を搭載しているVDI製品もあります。しかし、そうした最近の機能が全ての企業に必要なのかどうかは、また別の話と言えます。
VDI製品が持つ最新機能に魅力を感じて導入を決断したものの、実際にはほとんど不要で使えなかったというケースが少なくありません。また、膨大な導入コストのわりに使われないといったことも発生します。世の中で存在するVDI製品の機能面などについて事前に調査した上で導入を決定するべきでしょう。

事例 2. 仮想クライアントの操作性が悪くて仕事にならない…

VDI導入後の失敗事例として最も多いのが、導入後に仮想クライアントの操作性が低下し、仕事にならないほどパフォーマンが悪化するケースです。サーバーへのアクセスが集中する始業時や昼の休憩後は、「操作が遅すぎて仕事にならない!」というトラブルが発生するケースは少なくありません。これらは俗にログインストームとも言われており一極集中する際に起こりえます。昨今のような多くの従業員が在宅勤務を実施する場合には、このような現象は生産性を大きく損なうこととなり大きな損失になります。

事例 3. ファイルサーバーアクセスやプリント出力が遅くなった…

VDI導入後のパフォーマンスが低下するのは仮想クライアントだけではありません。ファイルサーバーやプリンタなど、周辺システムへのアクセスが不安定になったというケースも存在します。たとえ仮想クライアント自体はパフォーマンス低下を気にせずに処理できても、ファイルサーバーへのアクセスに時間がかかったり、プリンタ出力が遅くなったりすればこれも仕事になりません。

事例 4. 標準設定で運用開始したら問題だらけ…

VDIは導入後に標準設定しすぐに使えるような、単純なものではありません。細やかなポリシー設定やUSB利用時の処理など、専門的なチューニングも必要になります。にもかかわらず、標準設定でVDIを導入してトラブルが頻発するケースが少なくありません。

事例 5. 段階的な拡張で運用管理が複雑化しトラブル頻発…

VDI導入では特定部門でテスト導入・運用を行い、その後にVDI対象を拡大していくスモールスタートが一般的です。プロジェクトが数年間におよぶことも珍しくありません。その際に、サーバーOSや仮想化ソフトウェアなどのバージョンが混在することになり、これが障害発生や再設計による手間などを発生させる原因になります。

事例 6. Windows のバージョンアップで予期せぬリソース消費

Windows 10がリリースされてから既に数年が経過しました。これまで数回の大型アップデートを実施し、追加や改善された機能、更新されたデザイン、反対に廃止になった機能などがあります。Windows 10は“WaaS(Windows as a Service)”のコンセプトのもと提供されているOSで、継続的なアップデートを繰り返すことでソフトウェアのアップグレードを必要としないのが特徴です。つまり、その更新により動作の遅延や動作しなくなるなどの事象が起きかねないということになります。最新OSだけあって高機能なので環境によっては動作が重くなることが報告されています。

失敗しないVDI導入のための対応策

上記にご紹介したように、VDI導入のトラブルは多様にあります。それらの失敗の原因は、事前のサイジングが十分でなかったことや周辺システムとの連携性を考慮できていなかったことなどです。また、運用時における状況の変化もトラブルの大きな要因になります。それでは、失敗しないVDI導入のためにはどのような対応策が取れるでしょうか?

導入フェーズ

VDIを導入するフェーズが何よりも大切なのが、現状のシステムリソースを正確に把握するためのアセスメント(事前評価)です。VDIベンダーがおまけで提供しているようなアセスメントではなく、アプリケーションの稼働状況やリソース利用料などを調査し、過剰な投資を防ぎ性能とコストのバランスを取るためのものです。また、従業員が業務でどのようにリソースを活用しているかを移行前に把握しておくことも重要です。
VDIのパフォーマンス向上のためにストレージI/Oを強化することが多いですが、CPUやメモリでリソース不足が生じて処理が滞留し、その影響で性能が低下している可能性があります。このため、ストレージI/O強化を図るだけでは一時的に状況が改善したように見ても、再びパフォーマンス不足に陥ってしまいます。問題があればストレージI/Oを強化すればよいと考えるのではなく、事前のサイジングによってリソースのバランスを検討しなければいけません。

移行フェーズ

移行フェーズでは、既存の物理クライアントから仮想クライアントにデータを移行する作業が中心になります。このフェーズでは、移行作業スタッフが各ユーザーの環境にログインし、ドキュメントやプロファイルなどのデータを手作業で移行するのが一般的です。しかし、手作業なためデータのコピー漏れや誤って消去する可能性があり、情報漏えいなどのセキュリティリスクも発生しがちです。また、ユーザー自身がデスクトップ環境などを正確に移行することも難しく、再設定作業を自力で行えないユーザーも存在します。
大量のユーザー環境を手作業で移行する場合、限られた休日で作業を完了させるのは難しく、移行プロジェクトが長期化することもあります。そうした人海戦術に頼るのではなく、自動移行ソリューションを利用すると効率的かつ安全にデータを新環境に移行できます。

運用フェーズ

VDIが運用フェーズに入った段階で大切なのは、継続的にモニタリングを実施して改善を繰り返すことです。また、運用フェーズではVDIの利用環境は常に変化するということを念頭に置かなければいけません。VDI導入をきっかけにモバイル活用をスタートするなど、利用環境が変化するユーザーも少なくありません。導入初期のサイジングでは問題なかった場合も、VDIを長期間運用するとWindowsのアップデートなど利用者の環境が大きく変化していきます。
また、ソフトウェアの高度化によりリソースの使用量は増えています。アプリケーションをアップデートしても使用量は増加するので、VDI利用環境は常に変化します。このため、状況に応じてリソース不足が生じる前に強化したり、問題が発生したらすぐに問題を特定したりといったVDI環境の継続的なモニタリングが必要になります。また、社内のVDI環境においてインストールしていても使われていないアプリケーションを特定して、ライセンス数を減らしてコスト削減するなど、アプリケーション資産管理を同時に行う必要もあるでしょう。

SysTrackでユーザー目線のヘルスチェックとトラブルシューティングを実施

SysTrackは、VDI導入前のアセスメントから始まり、システム環境におけるあらゆるパフォーマンスを監視および向上するために有効な機能を提供しています。

VDIのパフォーマンス管理やヘルスチェックにSysTrackを取り入れると、デスクトップとサーバーの情報や使用パターン、リソース使用率を詳細に把握できます。つまり、全社のVDIを利用中のユーザーにおける問題点などを簡単に把握することができます。今回の新型コロナウイルス(COVID-19)の影響によりリモートワークや在宅勤務をスタートしVDIの利用が急激に増えている企業や組織もあると思います。VDIの安定運用と最高のユーザーエクスペリエンスを実現するためにSysTrackをご検討いただければ幸いです。