ビジネスの成功にはITが欠かせない時代になりました。しかし、逆にそのITが足かせになってビジネスを停滞しているケースもあります。十分なパフォーマンスを発揮できていなかったり、ユーザーからの持ちあがってくる問題や疑問に対し、迅速に対処できていないのが原因の一つです。

それに加えて高度なIT化が進み、スマートフォンやタブレットの活用が増加したことで状況は複雑さを増しています。こうした現代のITビジネスに欠かせないのが“ヘルプデスク”でしょう。

ヘルプデスクはユーザーからの問題や疑問を積極的に受付け、解決のためのアクションを起こし、ユーザーが円滑かつストレスなくIT環境を利用できるよう支援する部隊です。一般的にユーザーから上がる問題や疑問のことを“インシデント”といいます。

今回はインシデント管理を効率化するためのヘルプデスクについてお話しましょう。

ヘルプデスクの役割とは?

ヘルプデスクは社外の顧客向けにサービスとして提供するものと、社内ユーザー向けに提供するものがあります。今回焦点を当てているのは後者です。

企業が販売・提供する商品やサービスに対して、顧客向けのヘルプデスクを設置するのは当たり前ですが、社内ユーザー向けに専任のヘルプデスクを設置している企業はそれほど多くありません。多くの企業はヘルプデスクの役割を情報システム部門が兼任しています。では、ヘルプデスクには具体的にどういった役割があるのでしょうか?

  1. ユーザーからのインシデント受付窓口
    ITに関するインシデントが発生した際に、ユーザーが最初にコンタクトを取る窓口がヘルプデスクです。日々、様々な部門から寄せられるインシデントを総合的に受け付けて、それを管理します。
  2. インシデントの解決
    ユーザーから寄せられたインシデントがIT操作に関わるものは、単純な疑問やトラブルならばヘルプデスクがその場で対応します。そのためヘルプデスクには社内ITの操作方法や仕様について精通していなければいけません。
  3. インシデントの受け渡し
    ユーザーから寄せられたインシデントがインフラに関するトラブルや、システムの変更要求など高度な技術を要するものだった場合、ヘルプデスクはそれを適切な部門に引き渡します。その際はインシデントに関する情報をある程度整理しておき、すぐに対応できる状態で引き渡すことが大切です。

以上がヘルプデスクの大まかな役割です。細かいところで言えばインシデントが発生して日時や内容の記録、対応記録などを時系列で管理し、かつ必要ならばすぐに情報を抽出できるように整理しておきます。

こうした管理を適切に行い、同じようなトラブルを防ぐような活動も必要でしょう。そのためにはインシデント管理のプラットフォームの選択も重要な要素となります。

ヘルプデスクツールとは?

事業が成長し、取引の数が多くなったり従業員規模が大きくなっていくと、ヘルプデスクは意外と早い段階で従来のやり方に限界が生じます。この限界を超え、かつヘルプデスク業務を効率良く行うためのITが“ヘルプデスクツール”です。欧米諸国ではヘルプデスクを設置することが一般化しており、エンタープライズ企業や中小企業など規模を問わず、ヘルプデスクツールを活用しています。

具体的にどういった機能が備わっているかというと、シンプルなものならばユーザーから寄せられたインシデントを情報として効率良く記録したり、対応の状況を可視化し、データベースによって情報の抽出を簡単に行えます。高度な製品ならユーザーが好むチャネルでインシデントを寄せたり、かつマクロやトリガを使用して対応ワークフローを構築したり、複雑なプロセスも自動化することが可能です。

ヘルプデスクツールを選ぶ上で大切なポイントは“ITIL”に準拠していることです。これはInformation Technology Infrastructure Libraryといって、1989年に英国政府から発行されたITシステムのライフサイクルマネジメントに関するガイドラインです。発行から現在に至るまで3回の改訂を経て、2011年に発行さたれた“ITIL 2011 Edition”が最新版となっています。

ITILに準拠しているということは、ITサービスを安定的に提供し、かつ継続的に改善を加えていくための基盤が整うという意味でもあり、ヘルプデスクによってユーザーの日々のIT活用業務を支えていく上で強力な武器を手にできます。

ですので、ヘルプデスクツールを選ぶ際はまずITILに準拠しているか確かめるとよいでしょう。その他にはシステムとしての拡張性と柔軟性にも着目してください。

拡張性と柔軟性が高いヘルプデスクツールならば、導入後もカスタマイズを加えて業務に即したシステムへと仕立てることが可能です。将来的な仕様変更ニーズも考慮すると、拡張性と柔軟性の2点は必ずチェックしておきたいポイントです。

“予兆保全的なインシデント管理”という考え方

製造メーカーや食品メーカーなどの機械設備を扱う業界では、最近“予兆保全”という設備管理体制に注目が集まっています。これは、小型のIoTデバイスを機械設備に取り付けることで、センサーから得られる様々な情報を集約し、それを分析することでトラブルが起きる前にメンテナンスを加えるという保全のやり方です。

従来の保全業務といえば決まった定期メンテナンスを実施したり、現場からトラブル発生の連絡が寄せられると駆けつける事後対応が一般的でした。しかし、日々劇的に変化するビジネス社会において、そうした保全方法では事業へのインパクトが大きいため、トラブルの予兆を管理したトラブルが発生する前に対処する予兆保全へ取り組む企業が非常に増えているのです。

この予兆保全を向上全体に向けて実施するのがドイツ政府推進の“インダストリー4.0”や、世界中で取り組まれている“スマートファクトリー”です。これらは工場全体に取り付けられたIoTデバイスによって、広範囲な生産プロセスを自動化するための仕組みを作るものです。

実は、ヘルプデスクにおいても予兆保全のような考え方があります。それが企業を取り巻くIT環境を専用ツールによって可視化することで、様々なシステムパフォーマンスの低下に繋がっているボトルネックをトラブル発生前に特定し、事前に対策をすることができるのです。それを実現するのが “APM(Application Performance Management)ツール”です。“ワークスペースアナリティクス”とも呼ばれます。

APMツールはユーザーが使用する端末から継続的に情報を収集して、ユーザーの操作とシステムの関係性を定量的に可視化・分析しトラブルの予兆を管理したり、ボトルネックになっている部分の特定と解消の支援をするものです。

これを使用すれば“予兆保全的なヘルプデスク”を実現することが可能であり、ユーザーからインシデントが寄せられる前に物事を解決するため、ITを利用している業務を円滑に進めることができます。もちろん、インシデントが発生した場合にもボトルネック解消までのスピードも改善されるので、ヘルプデスクの対応もスムーズになるでしょう。

まとめ

ITILに準拠したヘルプデスクツールは有効ですが、さらにインシデント発生を事前に察知したり、対応を迅速化できるAPMツールの活用も検討していただければと思います。これによりインシデント自体を減らし、よりサービスレベルの高いヘルプデスクを実現することができるでしょう。

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