今年6月29日、働き方改革実現進会議が提出した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法)」が可決・成立したことで、あらためて働き方改革への注目度が高まりました。
もともと働き方改革とは「一億総活躍社会」に向けた取り組みの一つです。これは、50年後も人口1億人を維持し、老若男女問わず家庭・職場・地域で誰もが生きがいをもって活躍できる社会の実現に向けたチャレンジです※1。
日本の人口が年々減少していることは特別なデータを提示しなくとも周知の事実です。国立社会保障・人口問題研究所※2によれば、2048年には1億人を割って9,913万人になり、その約60年後には4,286万人まで減少すると予測しています。
人口減少に伴って労働人口も減少し、サービス業などの一部の業種ではすでに人材不足が深刻化し始めています。これに対して、政府が危機感を抱いているだけでなく、国内企業の多くがそのダメージを受けるため国全体が働き方改革に注目するのも至極当然なことでしょう。

ただし、この働き方改革について全貌を知っているという方は案外少ないのではないでしょうか。そこで今回は、6月29日に成立・可決した働き方改革関連法の内容も含めて、働き方改革の全貌をご紹介します。

働き方改革とは?

あらためて、働き方改革とは一億総活躍社会に向けた取り組みの一つであり、その背景には止まらない人口減少の波があり、その影響で労働人口も劇的に減少しています。総務省統計局が発表した労働力調査(基本集計)※3の最新版によると、6月29日時点での日本の就業者数は6,698万人で、前年同月に比べて151万人増加しています。
ただし年齢別の人口推移を見ると15歳未満の人口は年々減少傾向にあるため、全体的に見て労働人口が減少していることは事実です。
しかしながら、同時に長時間労働による過労死や格差などの社会問題もあり、人口減少の背景の中で、より合理的な働き方が求められているのです。こうした状況において、働き方改革実現会議では働き方改革関連法において3つの柱を立てています。

1.  長時間労働の是正

海外諸国に比べて日本は過労死が非常に多い国です。そこには、労働基準法によって明確な労働時間規定があるものの、特例によって長時間労働の強制が可能という現状があります。特に若者の過労死が多いことから、危機感を持った働き方改革実現会議が当初より掲げていたのが長時間労働の是正です。
今回の法案可決・成立によって月間100時間の残業時間を超えた場合、企業には厳格な罰則が与えられるようになりました。

2.  高度プロフェッショナル制度

これは年収1,075万円以上の高いスキルを持つ従業員を労働時間の規制から外すという制度です。一般的にはコンサルタントや研究職など専門スキルを要する人材が該当します。
高度プロフェッショナル制度では「柔軟な働き方を実現する」という目的がありますが、年収の定義に交通費も含まれるとしていることから、実質的な年収ラインに達していない人材も制度の対象になってしまうのではないか、という課題もあります。

3.  同一労働同一賃金

同一労働同一賃金とは、同じ働きをしている人には同じ賃金を支払いましょうという制度です。日本では正規社員と非正規社員の雇用格差が大きく、同じ労働環境でも収入に大きな違いが生じます。
この制度は将来的に非正規社員という枠組みを無くして、人それぞれのライフステージに合わせた働き方を選択できる社会を目指しています。ただし、雇用格差を無くしてインフレに向かっていくための取り組みという見解もあります。

これらが政府推進の働き方改革の概要です。こうして見ると、企業が考える働き方改革に相違があることが分かります。

企業が実現したい働き方改革とは?

企業視点で働き方改革について考えると、その目的は「労働生産性の向上」や「離職率の低下」など、政府推進の働き方改革とはまた違うものでしょう。労働人口減少という深刻な社会問題はあるものの、そのダメージが直撃しているという企業もまた少ないかと思います。

では、なぜ企業は働き方改革に取り組むのでしょうか?それは日本の市場が縮小する方向にあるなかで、グローバルでの事業展開が避けられない状況となり、企業競争が激しくなった現代ビジネスを生き残るために、より実のある施策に目を向けるようになったからと言えます。「働き方改革」を掲げているのは、政府主体となって推進している働き方改革に同調しつつ、企業はより競争力の強化を目指しているのです。

労働生産性を向上することはビジネスにより多くの付加価値を生み出すことに繋がりますし、多様な働き方をサポートすることで離職率が低下し、人材獲得コストを大きく下げることができるのです。

働き方改革を実現するための中核とは?

企業が働き方改革を実現するとき、その中心には必ずIT(ICT)の存在があります。これは働き方改革を実現する上で「時間や場所に依存しない働き方」の実現が重要な施策となっており、これを可能にするためにはITによるコミュニケーションやビジネスの基盤が欠かせないからです。

たとえばよくある働き方改革事例が「在宅勤務」です。日本では少子高齢化に伴って介護者人口が年々増加傾向にあります。しかし、働きながら介護をすることは非常に難しい問題であり、優秀な人材であっても介護に集中するために離職や転職を余儀なくされることがあります。

こうした状況を阻止するために多くの企業が「在宅勤務」へ取り組んでいるのですが、そのためには自宅にいながら働ける環境の整備が必要です。たとえば円滑なコミュニケーションのためにコラボレーションツールを導入したり、自宅から業務システムにアクセスできるようにするためにVPN(仮想プライベート網)の構築をしたりクラウドタイプのITシステムへ移行したりと、色々な取り組み方があります。

いずれの方法でもやはりITの存在が中心になり、ITの力で多様な働き方を提案することこそが企業にとっての働き方改革と言えるでしょう。

本質的な働き方改革の実現を

これまで多くの企業が働き方改革の旗のもとに、残業規制やプレミアムフライデーといった施策を展開してきました。しかしその多くは働き方改革の本質を捉えて、業務実態に即した改革ではありません。本質を見失った取り組みにより、結果として従業員の労働環境を悪化させて労働生産性の低下などを招いています。

ほとんどの働き方改革にはITの存在が欠かせません。残業規制をするにしても、業務改善を実施して仕事量を減らさなければ、その歪みは結局別のところに生じるだけです。しかしITを活用して仕事量を減らした上で残業規制をすれば労働生産性の向上や長時間労働の是正の本質的な解決になり、従業員のビジネスに対するモチベーションも向上するという好循環を得ることができるでしょう。

これからの働き方改革に、ITを活用して本質的な取り組みを目指していただきたいと思います。

※1参考:一億総活躍社会とは
※2参考:第2章 人口・経済・地域社会の将来像
※3参考:労働力調査(基本集計) 平成30年(2018年)5月分 (2018年6月29日公表)

【IDG調査】ワークスペースアナリティクスを活用してエンドユーザーの生産性を向上:IT部門の意思決定者はワークスペースアナリティクスを重視